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「フリースクール英明塾」代表 NPO法人「総合教育センター」理事長
川合雅久さん

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水中写真家
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匠が語るパプアニューギニア川合雅久さん
川合雅久さんポートレート

川合雅久 プロフィール

川合雅久(かわい まさひさ)
1949年東京都新宿区生まれ、1972年、獨協大学外国語学部フランス語学科卒業後、富士ゼロックス入社。同社を74年に退職後、「おちこぼれ」を対象として「英明塾」開塾、非行やいじめの子供たちのケアを始め、その後不登校の子供やその保護者達を対象に様々な支援プログラムを企画・実施。2001年NPO法人「統合教育研究センター」設立、翌年には東京青年会議所より「今動き出す「志民社会」NPOアワード2002年」において「優秀志民活動」賞を受賞。現在、全国各地からの活動視察を受け入れるとともに、行政、学校のほか各種団体からの依頼で講演や各種のアドバイスや指導、調査、意見陳述などを行っている。

「私の考える自然活動体験」

Tel&Fax: 03-5678-6599
URL:http://www.eimei-jp.org
E-mail:info@jenoc.org

パプアニューギニアギャラリー

日本ではいじめ、不登校やひきこもりが深刻な社会問題となっている。学校生活や労働環境など、若者を取り巻く環境は悪化の一途をたどり、彼らにとっては非常に生きにくい状況にある。そうした生活環境の中で、彼らの多くは五感や生きる意欲を失っている。私は「自然体験セラピー」という体験活動を通じて、そうした様々な苦悩を抱える子どもや若者の心を癒す支援に取り組み、その実践の場としてパプアニューギニアを選んだ。

なぜパプアニューギニアなのか。その理由の一つは、そこには他に比べて観光化されておらず、手つかずの自然環境が残っているからだ。そうした日本とは全く異なる自然環境は五感を閉ざした若者に驚きと感動を与えてくれるだろうと考えた。そしてなによりもパプアニューギニアのゆっくりと流れる時間、人々のゆるやかで、暖かな気持ちに触れることが、硬直した若者たちの心を解放させ、生きる活力を引き出してくれると確信したからである。私が提唱する「自然体験セラピー」とは、薬に頼るのではなく、こうした環境がもつ力を借りて五感や生きる意欲を取り戻す試みである。

私たちの旅のスタートは成田空港からである。参加者全員はそこで初めて顔を合わせることになる。人と関わるのが不得手であったり、中には外に出るだけでも精一杯な参加者もおり、家族と離れ他者との初めての海外への旅、未知の場所に行く期待と不安で皆の表情は満ちていた。約6時間後、首都ポートモレスビーに到着。私たちはいつものように、まずマダンに行き、その後、ロロアタを訪れることにした。

マダンではマダンリゾートホテルを拠点に、様々なイベントを行った。まず最初のイベントは無人島でシュノーケリングを使った海の中の探検である。青い海に、色鮮やかな珊瑚や熱帯魚。参加者にとっては初めて見る非日常の世界である。この幻想的な光景は「感動」の一言につきよう。

パプアニューギニアの海水は母親の羊水と同じ暖かさだ。目の前に広がる感動的世界とこの暖かい海に包まれることが、安心感を喚起し徐々に参加者の心をほぐしていく。当然だが、赤道直下の陽射しは日本と比べ物にならないぐらい強い。海での遊びに夢中になりすぎて、痛い日焼けを負う者もいる。しかし五感を失った彼らにとって、感動体験に加えて、この「痛み」も感覚を取り戻す上で大切な経験である。

もう一つ、マダン滞在中の大きなイベントとして、村の学校の子どもたちと交流を行った。村はマダン市外から車で約一時間、山の奥地にある。学年ごとの小さな校舎が、広いグラウンドを囲むように建てられている。素朴な木造校舎だが、風通しもよく、過ごしやすそうである。私たちが村にたどり着くと、まもなく先生は授業を途中でやめてしまった。すると教室から子どもたちが大きな歓声をあげて、全速力で私たちのほうに走ってきた。

子どもたちとボール遊びやおいかけっこをしたり、日本からもってきた折り紙遊びでしばしの国際交流。最初、戸惑いの表情をしていた参加者も子どもたちと関わるにつれ、満面の笑みで、子どもたちとグラウンドを走り回り、遊んでいた。私が彼らと初めて出会ったころは、無表情であったのに、それは大きな変化であった。そして子どもたちとの別れ。

ほんの数時間の滞在であったが、参加者の中には別れの涙を浮かべる者もいた。まさに「ウルルン」体験である。思いっきり笑い、思いっきり泣く。パプアニューギニアの子どもたちの素朴で純粋な心が参加者の五感を刺激し、心を解放したと言えよう。

マダンを後にして、ロロアタに向かった。ロロアタはポートモレスビーに近い小さな島で、私たちは海沿いのコテージに滞在した。マダンでの活動が「動」だとすれば、ロロアタは「静」の時間である。そこではスケジュールを決めず、皆、思い思いに過ごせる時間にしている。コテージのベランダの椅子に腰掛け海を眺めながら、ぼうっとする。カヌーに乗って島を一周。夕焼けを目の前にして、桟橋でハーモニカを奏でる。夕食は3時間くらいかけて、おしゃべりをしながらゆっくりとる。

マダンでの活動的な時間とはうって変わって、ロロアタではそれぞれがゆっくりした時間の流れに身を委ね、今の自分を見つめながら、旅の疲れを癒す。この時間の中で、たわいもないおしゃべりをしたり、自分について語り合ったりするなど、ロロアタ滞在の頃には皆すっかり表情豊かになり、互いに心を開いていた。

もちろん、心を癒す上で旅のスケジュール構成も重要であるが、しかし何よりもましてパプアニューギニアの人や自然、時間が彼らの心に活力を与えたのだと感じている。

帰国後、参加者のほとんどは生きる意欲を取り戻し、学校に復帰したり、働きはじめている。彼らはその後の生活において悩みを抱えることがあっても、この旅行中の経験が生きる支えになっている。中には、「またパプア行きたい」と、それが原動力になって働く者さえいる。パプアニューギニアには、疲れた心を癒すとともに、生きる意欲を湧き上がらせる不思議な力がある。

「私の考える自然活動体験」